発行日:2018/12/13
発行者:iST宜特
なぜ表面金属化プロセスが必要?
全てのウェハーに金属化プロセスが必要とは限らないのはなぜ?
表面金属化プロセスに使用される2種類の方法とは?
1.なぜ表面金属化プロセスが必要?
表面金属化プロセスは MOSFETウェハー薄化において鍵となる工程です。MOSFETは、高速なスイッチング速度、低い入力抵抗そして低消費電力の特性を備えながら、大電流に耐える必要があります。このために製造工程において、電流経路の拡大を目的に、金属製ワイヤボンド(Wire Bond)をCuクリップボンド(Clip Bond)で置き換え、導線抵抗およびRDS(on)(導通抵抗)を減少させます。
表面金属化プロセスの目的とは、スパッタリングまたは無電解メッキによりUBMを形成し、さらにCuクリップボンド (Clip Bond)を形成することで、導線抵抗を減少させることにあります。クリップボンド(Clip Bond)を使用する場合、アルミレイヤ上方には必ずUBM (Under Bump Metallurgy)が必要となり、アルミレイヤとクリップ(Clip)間のハンダ付け面(Solder Surface)となります。UBMを形成する金属元素は、スパッタリングおよび無電解メッキによって各種異なり、スパッタリングではTi/NiV/Agが、無電解メッキではNiAu/NiPdAuが使用されます。
2.全てのウェハーに表面金属化プロセス(FSM)が必要とは限らないのはなぜ? どんなタイプに必要?
MOSFETモジュールにクリップボンド(Clip Bond)または混合ボンド(Mixed Bond:SourceにClip Bond、GateにWire Bond使用)が用いられる時、アルミレイヤ上方にはUBMを形成して、Clipと接合する必要があります。もしMOSFETが大電流不要のアプリケーションに使用される場合には、Wire Bondを直接アルミレイヤ上に形成すればよいので、FSMによる処理は不要となります。
3.自動車用エレクトロニクスおよびハイエンド分野メーカーの選択-スパッタリング
スパッタリングプロセスとは、高真空スパッタリングマシンでウェハー(Wafer)にTi/NiV/Agを成長させ、フォトレジスト塗布後、フォトマスクでの露光現像後(フォトプロセス)、アルミレイヤ上方に被覆を形成、さらに余分なUBMはエッチングにより除去(エッチングプロセス)します。これらは既に確立された安定した工程であり、信頼性も非常に高いので、多くの自動車用エレクトロニクスメーカーおよびハイエンド分野メーカーが、この製造プロセスを使用しています。
スパッタリングプロセス(Typical Sputter UBM Process)
図1: スパッタリングプロセスは、金属のスパッタ、フォトレジスト塗布現像、金属のエッチング、フォトレジスト除去等、各種機械、多くの工程を必要とします。
4.MOSFET表面金属化プロセスでの高コストパフォーマンスの選択-無電解メッキ
前述のスパッタリングプロセスにおいては、高真空スパッタリング、フォトプロセス、エッチングなどの工程は確立し安定しているものの、コストは比較的高く生産時間も長くなるので、コスト重視のMOSFETへの適用では二の足を踏む状況も見られます。
お客様各位の声に耳を傾け、皆様の満足を目標とする宜特はこの点に注目し、「酸化還元反応」をベースとした無電解メッキプロセスも用意しています。
無電解メッキは、一般に化学鍍金(Chemical plating)、または無電解メッキ(Electro-less Plating)と呼ばれ、外部から加電することなく、化学薬剤を使って一連の制御可能な酸化還元反応を起こし、化学薬剤中の金属イオンをウェハー上で金属膜に形成させる方法です。
無電解メッキ工程の最大の特色は、一連の酸化還元反応を利用するだけでニッケル・金/ニッケル・パラジウム・金を選択的にアルミレイヤ上に成長させる事ができるので、高真空スパッタ/フォト工程/エッチングを全く必要とせず、コストを低減し製造時間も短縮する事が可能となる点です。無電解メッキ工程(E’less Plating Process)
図2:この図は無電解メッキ工程を示しています。一台の無電解メッキマシンのみで一連の無電解メッキ手順を自動的に実行できるので、手順が複雑なスパッタリング工程に比べて、無電解メッキ工程はとてもシンプルながら、同じ目標を達成できます。
5.無電解メッキ工程の生産フロー
無電解メッキ工程の生産フローでは、操作者がウェハー表面の検査を完了後、カセット(Cassette)をマシン上のロードポート(Load Port)に設置、バーコードスキャン後、製造実行システム(Manufacturing Execution System, MES)によってこの生産ロットに必要なプログラムをロードし、処理を自動的に実行します。完了後、システムに表示されるので、操作者はアンロードポート(Unload Port)から取り出すだけで処理は完了します。このように見かけはシンプルな生産フローですが、一連のよく制御された複雑な化学反応が必要とされます。
無電解メッキの手順は、図3に示されるように、先ず前処理実施後、1度目の亜鉛活性化 (Zincation)を行った後、硝酸(HNO3)によって比較的粗い活性化亜鉛の顆粒を除去した後、再度亜鉛活性化を行うことで、よりキメの細かな活性化亜鉛顆粒を形成、続いてNiAu/NiPdAuを成長させます。図3、無電解メッキ工程フロー図
6.スパッタリングと無電解メッキの比較
お客様の製品が表面金属化プロセス(FSM)を必要とする場合、無電解メッキは、アルミレイヤ上に選択的にニッケル・バナジウム・金を成長させることから、その特性上、シンプルなClip Bondに適しており、高いコストパフォーマンスおよびコスト重視のお客様にご使用いただけます。スパッタリングは、高真空設備による金属のスパッタリングとフォトレジスト用の設計パタンを使用することにより、その特性上、信頼度に優れ、高品質高信頼性をお求めのお客様にご使用いただけます。
無電解メッキ スパッタリング 原理 酸化還元反応 物理気相堆積 図形の形成 選択的に成長 フォト・エッチング工程が必要 金属 ニッケル・パラジウム・金またはニッケル・金(NiPdAuまたはNiAu) チタン・ニッケル・バナジウム・銀 (Ti/NiV/Ag) コスト 比較的低い 普通 信頼性 可 優 生産時間 短 普通(フォト・エッチング含む) 表1:無電解メッキとスパッタリングの比較表
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