首頁 商用オフザシェルフチップの個別試験による宇宙産業への転用

商用オフザシェルフチップの個別試験による宇宙産業への転用

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世界の宇宙産業は2040年には1兆米ドルを突破するものと予測され、電子業界は宇宙産業市場に参入しつつある。ロケットや厳しい宇宙環境という難関に対応するには、地上でシミュレーションと試験を行い、より信頼性の高い製品を確保する必要がある。

人工衛星は、その軌道の高度により低軌道(LEO<2,000 Km)、中軌道(MEO<10,000 Km)、静止軌道(GEO~35,800 Km)に分けられ、重量も数キロのものから数百キロのものなど、様々です。中でもSpaceX Starlink低軌道通信衛星の商業化が始まり、宇宙産業の経済モデルが確立されようとしています。

超小型衛星(キューブサット)は製造コストが安価なため、衛星技術研究の入口として人気があります。衛星産業チェーンは日ごとに円熟の域に達しつつあり、衛星の打ち上げや製造コストの削減など、大きなビジネスチャンスが生まれようとしています。これに関連した電子部品のニーズも高まりつつあり、多くの業者はこの宇宙産業市場に関心を持つようになっています。

従来の宇宙仕様の電子部品は非常に高価であるだけでなく、一部の部品は各国が輸出を規制しているため入手が容易ではありません。それに対し、商用オフザシェルフ(COTS)、すなわち、コンピューター、スマホ、自動車用の電子部品は安価で性能も優れ、供給も十分です。そのため近年ではCOTSを宇宙産業に転用する動きがあります。

COTS電子部品を宇宙産業に転用するには必要な検証項目は?

振動試験

音響試験

衝撃試験

電磁両立性試験

熱真空・熱サイクル試験

放射線試験

電子部品に対するロケット打ち上げの影響

1. 振動試験

衛星は地上で製造されるため、温度、湿度、粉塵汚染などの影響を考慮する必要があります。組立てられた衛星はロケットで地上から打ち上げられますが、その際にロケットの激しい振動を受けます。振動試験装置は地上で打ち上げをシミュレートできるもので、垂直および水平方向の振動試験ができるものです。ロケットにより振動はそれぞれです。

例えば米国SpaceXのファルコン大型ロケットの振動試験パラメーターは、1秒当たり10~2,000回の振動周波数、重力加速度は数十倍となっています。振動試験では衛星や電子部品が打ち上げの際に正常に作動するかの確認を行います。

2. 音響試験

ロケット打ち上げでは音響ノイズが発生します。ソーラーパネルやアンテナパネルなど面積が大きく薄い部品は音響ノイズの影響を大きく受けます。音響ノイズは、部品の破裂、構造破壊、機能異常を生じさせます。音響ノイズチャンバーはロケットの音響ノイズをシミュレートします。

試験は液体窒素を気化して行いますが、その際、液体窒素の体積が瞬間的に数百倍に膨張するため巨大な圧力が発生し、その気流をスピーカーで音波に転換して音響ノイズチャンバーに入れます。こうして室内の衛星や部品をテストします。

3. 衝撃試験

ロケットが一定の高度に達すると、各段のエンジンは順に切り離しが行われます。その後、整流翼が開き衛星を軌道に乗せます。これらの過程では衝撃(ショック)が生じますが、これは、部品の溶接部、チップ、他の脆弱な材料の耐久性を試みるものとなります。そのためあらかじめ衛星と電子部品の巨大な衝撃に対する耐性を確認する必要があります。

4. 電磁両立性試験(EMC)

多数の電子部品はロケットの狭い空間に入れられるため、衛星とロケット間の電磁干渉が問題を引き起こすことがあります。そのため打ち上げ前に電磁両立性試験(EMC)を行い、衛星の電子部品とロケットが相互に干渉しないことを確認しておくことが重要となります。

電子部品に対する宇宙環境の影響

1. 熱真空・熱サイクル試験

低軌道衛星は毎秒7キロで飛行し、約90分で地球を一周します。衛星は真空の中を飛行し、大きな温度差にも対応しなければなりません。太陽に照らされる時、その温度は120℃になり、太陽から隠れる時には零下120℃になるからです。真空環境では電子部品は放熱不良により破損することがあり、真空低圧環境では、部品材料が分解したり、液体や気体が漏れて汚染が生じたりすることがあります。

熱真空循環試験では、宇宙環境における真空状態と温度変化をシミュレートします。衛星または電子部品を超低圧の真空チャンバーに入れ、太陽放射を模擬した放射線や伝導で衛星や電子部品の温度を上げます。衛星や電子部品は通電作動状態にしておき、リアルタイムで機能が正常かを監視します。熱真空サイクルは通常、一週間かそれ以上で、多くの衛星や電子部品がこの試験で不合格になります。

2. 放射線試験

大気圏の保護がなくなった電子部品は宇宙空間で放射線に直接さらされることになります。地球の軌道において受ける放射線には、ヴァン・アレン帯、銀河宇宙線、太陽高エネルギー粒子などがあります。

そこには大量の電子、陽子、少量の重イオンが満ちています。それらが衛星の電子部品を直撃すると、情報撹乱、ハングアップ、恒久的な故障などを引き起こします。衛星の寿命は短いもので数か月、長いものになると数十年になりますが、軌道上の時間が長くなるほど放射線の影響を受けやすくなります。

宇宙空間の電子部品は必ず放射線の影響を受けるため、事前に放射線試験を行い、その特性を評価する必要があります。COTS電子部品はどれも一定の耐放射線機能を持っていますが、試験を通して、宇宙空間でも通用するかを確かめる必要があります。

飛行履歴:電子製品を宇宙に押し上げる最後の一マイル

COTS電子部品を宇宙に持って行くには必ず「打ち上げ環境試験」を行わなければなりません。ロケット打ち上げ時を模擬した音響試験、振動・衝撃試験、電磁両立性試験、さらに宇宙空間での熱環境試験と放射線試験などがあります。(まだまだありますが、ここでは詳述しません)これらの試験に合格した後、さらに重要なのは「飛行履歴」 (Flight Heritage)を得ることです。製品が宇宙に打ち上げられてから、各種の任務を成功裏に終え、より多くの飛行履歴を得ることになれば、製品の価値はそれだけ上がります。宇宙産業ではこの飛行履歴を重視しています。それは製品の最高の保証書だからです。

iSTはアジアで最も設備の整った宇宙環境試験第三者ラボです。2019年に国家実験研究院宇宙センターと提携し、台湾の宇宙産業の発展を目指しています。2021年には、台湾宇宙放射線環境測定連盟に加入し、アナログ、デジタル、メモリー、無線周波数など電子部品放射線試験の幾十もの案件を手掛けてきました。iSTはより十全な宇宙環境検証試験機能とワンストップサービスを提供しています。専門的な分業制を採用し、国内外の業者が製品設計と製造に注力できるよう、宇宙環境試験のお手伝いをしています。